病院建替前に検討しておきたい3つのパターンとその注意点 ‐ 2

“同敷地で建替を行う”際の2つのチェックポイント

■ 建替時に検討するべき3つのパターン!
【A】既存の建物を大改修する (一部増築も検討)。
【B】同敷地で建替を行う (建替後は既存建物解体)。
【C】別敷地で建替を行う (既存の土地建物は別用途もしくは売却)。
今回は “【B】同敷地で建替を行う” についてお話します。このパターンでは「2つのチェックポイント」があります。

1. 敷地の接道状況と、行政指定の『地区計画』

敷地が2本以上の道路に面しているかは運営への影響を抑え、安全に工事を進める上で重要な要素となります。接道する2本の道路を上手く利用し、病院運営と工事の動線を明確に分離することで、互いの安全性と効率性が高まり、工事コストの削減と工期の短縮へと繋がります。

1本の道路でもその接道が長ければ問題は無いですが、2本以上の道路接道は多くの動線がめぐる病院建築において、建替時の優れた動線計画と効率的な平面計画の実現にも寄与する、重要項目と考えてください。

市が指定する『地区計画』にも注意が必要です。見落としがちな規制ですが、都心からそう離れていない場所でも建ぺい率を40%と厳しく設定されていることがあります。配置・平面計画に大きく影響しますので要チェックです。

上記の課題は隣接する適正規模の土地を取得することで解決出来ます。よく病院の管理者が「隣の土地は相場より高くても買う」というのはこんな理由からでしょう。

2. 工事中の仮設駐車場は確保できるか

100床前後の医療法人さんにおける同敷地での建替の場合、条件にもよりますが着工、竣工、引越し、旧建物解体、駐車場整備まで2年ちかくの期間を要します。

ほとんどの場合、現在の駐車場に新しく病院を立て直すことになりますので、患者用とスタッフ用を含め病院運営に必要な台数を算定して、足りない台数を近隣で借りることになります。

公共交通機関の駅が近接してても、駐車場の不足は減収と患者さんの病院ばなれにつながることにもなるので、着工の1年くらい前から月極めの駐車場の交渉や、近隣の企業の空地などに目をつけ、徐々に話を進めていくと良いでしょう。

3. まとめ

課題もありますが、”【B】同敷地で建替を行う”は、地域や近隣医療機関との連携も継続可能で、何より患者さんがついているという大きなメリットがあります。敷地の条件をしっかりと把握し、計画を進めてください。

ABOUTこの記事をかいた人

認定登録医業経営コンサルタント、一級建築士。SAWA医療設計(株)代表取締役社長。株式会社石本建築事務所に14年間勤務後、2005年に札幌にて独立開業。25年以上にわたり病院設計に従事。病院専門の設計事務所として、改修および企画設計の技術・ノウハウを蓄積。複数の医療機関の改修工事に携わりリノベーションの実績をあげている。【SAWA医療設計ホームページ:http://www.sawa30.com】