知っておきたい!建設費と運用コスト ー 建設費は全体の約2割

初期費用としての建設費は約2割、残りの8割は40年間分の光熱費費や修繕更新費などが占める。

病院建築の生涯寿命を40年間と仮定した場合、上図に示すよう建設費は18%で約2割、残りの8割は運用段階での費用が占めます。この建物の生涯かかる費用は、一般的にライフサイクルコスト(LCC)と呼ばれています。

ライフサイクルコストは5項目に分類されており、下記に示す通りです。
① 建設費 → 施設建設費用
② 光熱水費 → 電気・ガス・水道
③ 保全費 → 清掃・ゴミ処理・設備管理・警備
④ 修繕・設備等更新費 → 建築、設備機器の修繕、更新
⑤ 一般管理費 → 諸税・保険料・レンタル(リース)・消耗品

このライフサイクルコスト、病院、オフィスビル、ホテルなど建物の用途によって各項目の割合が異なり、病院のライフサイクルコストにおいては、上図の%がよく利用されています。

例えば建設費が20億円かかる場合下図のようになり、40年間の光熱水費はその1.5倍の30億円ほどかかる計算になります

このライフサイクルコストの考え方は、新規事業の経営判断の材料として利用出来ます。最初に“ライフサイクルコストにおける建設費の捉え方”に着目し、2つのチェックポイントについてお話しします。

1. 5つの項目は連動している

最初のチェックポイントは、例えば① 建設費、② 光熱水費 、④ 修繕・設備等更新費などの5つの項目が連動して、各費用が変化するということです。

北海道などマイナス気温が続く寒冷地における病院では、室温を保つために毎年度11月から4月までの半年あまりを暖房に頼ることになります。その対応策として、エネルギーロスが少ない建物をつくる目的で、外断熱や断熱窓の手法が採用されることがあります。

当然ながら初期段階での①建設費は上がりますが、その1.5倍の割合を示す運用段階での②光熱水費は下がることになり、さらにコンクリートの躯体部分を、断熱材が守ることから外壁部の④修繕・更新費の軽減にも繋がります。

2. ライフサイクルコストを意識する

上記の具体例の他、建物の構造形式、設備方式、照明計画なども、病院のライフサイクルコストにおける重要な指標となりますので注意が必要です。

各指標毎に建設時における設置費用、維持管理費用、耐用年数などの比較表の作成を業者さんに依頼し、アドバイスを受けながら判断されるのが良いでしょう

大切なのは初期費用の①建設費を抑えたいケース、運用段階での②光熱水光や④修繕費用などを抑えたいケースもありますので、その時の判断材料の一つとしてライフサイクルコストを常に意識し活用することです。

3. まとめ

病院のライフサイクルコストにおいて、建設費と連動する光熱水費などの各費用は予想以上のものです。中期・長期ビジョンに立ち、40年近くに渡る生涯費用を把握することが事業の成功に繋がります。

ABOUTこの記事をかいた人

認定登録医業経営コンサルタント、一級建築士。SAWA医療設計(株)代表取締役社長。株式会社石本建築事務所に14年間勤務後、2005年に札幌にて独立開業。25年以上にわたり病院設計に従事。病院専門の設計事務所として、改修および企画設計の技術・ノウハウを蓄積。複数の医療機関の改修工事に携わりリノベーションの実績をあげている。【SAWA医療設計ホームページ:http://www.sawa30.com】