将来的な改修工事の柔軟性を高め、運営への影響を抑えながら工事費を最小限に抑える
2025年問題に向けて国は、社会保障費抑制のための政策を次々と提示してくると考えられます。しかし、現時点で10年先の診療報酬などの動向を見通すのはなかなか難しいことです。
そこで今回は、病院を新築・増築する場合の企画・設計段階での見落としがちな2つのチェックポイントをお話します。
これらのポイントは、将来の新たな診療報酬獲得や医療法への対応の際、既存建物の改修費やその他病院運営コストに大きな影響を与えますのでご注意下さい。
1. 耐震壁の設置位置をチェック
病院改修工事において、1番頭を悩ませるのが、コンクリート壁の存在です。コンクリート壁は、大きく2つの役割を果たしています。
1つ目は、建物を支える構造としての役割(耐震壁)、2つ目は耐火性、耐水性の役割です。1つ目の耐震壁としての役割を果たしている場合は、耐震性に影響を与えるため、間取り変更などでの撤去は不可能です。
2つ目の耐火性・耐水性のコンクリート壁の場合は、機能性を保持できれば撤去可能です。しかし撤去時の騒音と振動は凄まじく患者さんへはもちろん、医療サービス提供の面において大きな影響を与えます。
そこで、新築や増築の企画・設計段階から、耐震壁の設置位置をチェックしてください。例えば、診察室や処置室の並びの壁、病棟の長い廊下の壁など将来的な間取り変更の可能性がある部門には、耐震に影響のない範囲で設置位置をよく検討するよう設計業者さんへお願いして下さい。
予め将来の変化を見越しておくことで建物の変化への柔軟性は高まりますし、改修コストも抑えることが出来ます。
2. 隣の土地への拡張性をチェック
次のチェックポイントは、病院の将来的な拡張性です。例えば、15年後に病院の隣地を新たに取得し新棟を建てたとして、その2つの建物がスムーズに連結可能かということです。
連結の障害となるのは、既存建物から隣地に向かって連結するべき適切な廊下が伸びていないことです。その様な事態にならないよう病院の建替計画などにおいては、企画段階から隣地における将来増築をイメージし計画を進めるよう、設計事務所の担当者さんにお願いして下さい。
最初から渡り廊下などを設置する用意をしておくと既存改修時のコストが大幅に縮減されますし、病院運営への影響も軽減されます。
他にもチェックポイントはありますが、上の2つのポイントは後からでは対応が不可能な大きな項目です、忘れずにご検討下さい。
3. まとめ
医療の将来の動向は予測が困難、将来的な新たな診療報酬の獲得、制度改革による医療法への対応に向け、改修や拡張がし易い柔軟性のある病院づくりを目指す!