病院建替前に検討しておきたい3つのパターンとその注意点 ‐ 1

“既存大改修”を決断する際の2つのチェックポイント

「設備も古くなったし、スタッフも開院当時から倍増、全体的に狭くなってきたので、そろそろ建替を考えているのだけど…」

建替を考えられる時は3つのパターンを検証され、それぞれのメリットとデメリットをおさえた上で、計画を進めると迷いや手戻りがなくなります。
■ 建替時に検討するべき3つのパターン!
【A】既存建物を大改修する (一部増築も検討)。
【B】同敷地で建替を行う (建替後は既存建物解体)。
【C】別敷地で建替を行う (既存の土地建物は別用途もしくは売却)。
大きく見れば、『既存改修か建替か』ということです。

まずは【A】既存建物を大改修するかどうかを決断する際の「2つのチェックポイント」です!

1. 耐震化は済んでいるか

厚生労働省の平成28年度の調査結果では、全国の病院のうち71.5%の病院が耐震化の工事を終了しているとのデータが発表されています。

新耐震の基準を満たしているかの判断は、昭和56年6月1日以降に着工した、厳密には建築確認申請がおりている建物かどうかです。

耐震化工事は、病院にとってはとても大変な工事と言えます。工事費用は高額ですし、建物を補強する様々な補強部材をとりつけていくので、騒音・振動もかなりのものとなます。工事の際には、工事範囲にかかる部屋の使用制限などがあり、病院運営と収益にも関わる手ごわい内容となります。

2. スプリンクラーは設置されているか

100床以下の病床数の病院では、スプリンクラーの設置を緩和されている建物も少なくありません。

しかし、「既存の病院を改修の上で、手狭なので一部増築もしたい」とお考えでしたら、現行の消防法にてらしますとスプリンクラーの設置を余儀なくされるケースが多くなります。

スプリンクラーの設置は、廊下はもちろんのこと病室にも工事範囲が及ぶ上、更に非常用発電機やポンプなどの設置もありコスト面においても要注意です。

3. まとめ

他にも医療法上の廊下幅員の確保や、病室の内法面積がクリアしているかなども重要な視点となります。全てクリアしていなければ「建替」をおすすめします。

ABOUTこの記事をかいた人

認定登録医業経営コンサルタント、一級建築士。SAWA医療設計(株)代表取締役社長。株式会社石本建築事務所に14年間勤務後、2005年に札幌にて独立開業。25年以上にわたり病院設計に従事。病院専門の設計事務所として、改修および企画設計の技術・ノウハウを蓄積。複数の医療機関の改修工事に携わりリノベーションの実績をあげている。【SAWA医療設計ホームページ:http://www.sawa30.com】